アートネイチャーに行ってたはなし

 ここでハゲてたまるか。若干19歳。じぶんにとって髪が抜けていくことは深刻な問題だった。わかめを食べてみた。だめだ。いいシャンプーをつかってみた。だめだ。早く寝てみ、だめ。運動し、だめ。育毛剤をつかってみた。だめ。飲み薬をのんだみた。だめ。だめだめ。もうなにやってもだめ。若ハゲって残酷。あらゆる自信をうばっていく。

  最後の手段でアートネイチャーに行くことを決めた。こういうところにはもっと年配のひとが行くところだと思っていた。まさか自分が行くとはね。しかもこの年齢で。つらかった。値段も高いし。でも行くからにはフサフサになるはず。

  アートネイチャーにの店員はパチンコ好きだった。勝てる方法を熱く語っていたけど興味のない自分とってはどうでもよかった。それより髪をなんとかしてください。入会前に「毎回当社自慢のスコープで頭皮の状態を見られますよー」と説明してくれていたのでお願いしてみた。「今日は機材の準備ができていませんので次回やりますねー♪」。まあ準備もあるだろう。ということで、その次回を楽しみしていた。だけど行く日にはすっかり忘れていた。それも毎回のはなし。結局スコープで見ることは一度もなかった。じぶんは髪を生やしにきているのに。ちょっとあきれた。早くふさふさにしてよ。

 

 ただ、店員さんの髪の毛はふさふさだった。それが救いだった。でも、実ははげていた。ある日、ぶっちゃけやがった。髪に義毛を縫い付けるという施術をやっていた。同時にズラもかぶってやがった。そしてじぶんもすすめられた。若いうちに育毛対策するのがオススメとか言ってくるくせにカツラをすすめるだと?!根本的な解決に至らないことを抜かしやがる。不信感でいっぱいだった。まだわかい。可能性はあるはず。じぶんはあくまでも自力で生やしたいのだ。リーブにしとけばよかったかなと思った。そんなこと思っているうちにも髪は抜けていく。ふさふさにしてよ。

  アートネイチャーに行くのは億劫になっていった。前日前々日から憂鬱。「まだ若いのにどうして俺はアートネイチャーになんかに通ってるんだろう」。髪のためになる時間なのに行きたくなかった。それにアートネイチャーが入っているビルには毎回忍び込むように入らないといけない。いまは平気で話せるけど、あのときはひとにばれたくなかった。毎回毎回この瞬間は心にくる。 ようやく施術は最終回をむかえた。今日で終わりだ。もう行かなくてすむ。終わる前に今後の継続を強くすすめられた。もちろん断った。家に帰ってからも誘いの電話が何本かはいった。コンプレックス産業の恐怖をみた。

 

 やっと解放された。アートネイチャーに通ったことでなにが大切なのかを知らぬ間に学んでいた。そう、髪のために一番大事なのは髪のことで悩まないことだ。わかめもシャンプーも睡眠も運動も育毛剤もいらない。いるのは楽しい生活だ。常にポジティブでいること。ストレスを抱えないことだ。なにかきつい状況にあるときに「ああ、ハゲそう」って軽く言うやつの気が知れなかったけど理解できるようになってきた。ストレスは思っている以上に頭髪を蝕む。

 もちろん、ハゲの原因として遺伝もあるだろう。でも遺伝子レベルでハゲが決定されているのであればもう諦めるしかない。でもね。ときに人間は自らの遺伝子にだって歯向かえることができると思うんだ。完全に背けないにしてもストレスをためないことはいくらか効用があるだろう。そうこれもポジティブ精神。

 アートネイチャーの日々を終えてから数ヶ月後、じぶんの頭髪に変化が起きてきた。髪が太くなってきた。抜け毛が減った。昔のような元気な状態に戻ってきた。アートネイチャーにいっていた話をネタとして友人に話せる余裕もできてきた。だいたい、もうハゲることだってこわくない。ハゲたらハゲたでいいじゃん。スキンヘッドでいいじゃん。精神的に強くなった。アートネイチャーありがとう。みんなも楽しく生きよう。ハゲるよ。

 

※はげているひとをじぶんは馬鹿にはしません。どうせじぶんもはげます。それに「はげ」はじぶんにとって大したことではないので。はげることは異常ではなく自然なことです。遺伝、病気、ストレス、薬の副作用、ひとによってはげる事情も異なるでしょうし、はげることに対する気持ちも異なるでしょう。この記事をみて不快なられたかたがいましたらごめんなさいはげを面白おかしく伝えるというよりはポジティブってすげえってこと今回は言いたかったです。長文失礼しました。